シマリス 腹腔内腫瘍

今回は7歳のシマリスさんの巨大腹腔内腫瘍の症例です。
シマリスさんは本来、本院の診察対象動物ではありませんが、他に診てくれるところが無いとのことで来院しました。

症状は陰茎が包皮から出っぱなしで戻らない とのことでした。
一般的に包皮内にバイ菌などが入って感染したりすることで起きます。シマリスさんは本来お利口に診察させてくれる動物ではありませんが、今回のこのシマリスさんは全く抵抗せずに診察させてくれました。
これは陰茎が出っぱなしというだけではなく、何か重大な全身疾患を抱えている可能性がありますので、後日詳しく調べてみたら、お腹の中に水が貯まっており、巨大な腫瘤が確認されました。年齢的にも腫瘤は癌である可能性が高く、治療としては摘出するか否かということになります。

ウサギ・ハムスターなどの小型動物は、癌に対して点滴抗癌剤や放射線療法などは非現実的であり、実際はリスクは高いが外科手術によって摘出するか?あるいは免疫増強剤などで癌と供に生きていくか?の選択になります。

人間や犬猫であれば、麻酔前にしっかり血液検査して、麻酔中も血圧などの生体情報を詳しくチェックして安全に麻酔は行われますが、ハムスター位の小型動物になると麻酔前の血液検査も困難ですし、麻酔中の生体管理も限界があり、麻酔も単純にマスクによるガス麻酔になります。ですので外科手術は症例によってはかなりリスクの高いものになります。
ハムスター以下の小型動物では動物の年齢、全身状態、無治療の場合の生活の質、手術の難易度などにより飼い主様と相談して手術に挑むかどうか決めることになります。

今回は超音波検査で腎臓や肝臓などの各種臓器にくっついている所見は無く、摘出は可能と思われました。しかし全身状態があまり良くないのでリスクの高い手術になります。
そして今回は飼い主様と相談して手術に挑むことになりました。


(お腹の中の腫瘤が左脇腹に白い塊として見えています。)


(腫瘤の全貌が見えます)


(無事に摘出できました!)


(腫瘤は病理検査の結果、精巣の癌であることがわかりました)

今回は無事に手術が成功し、傷口舐めないようにエリザベスカラーをつけてその日のうちに退院しました。陰茎の突出も無くなりました。腫瘤は検査の結果、精巣の癌であることがわかりました、手術後抗癌剤もできない小型動物なので今後はアガリクス配合フードなどで免疫力を高めて生活するようになります。

ハムスター以下の小型動物はその体の小ささから思うように治療できないことが多くあります。
無謀な手術をすることは出来ませんが、しかし麻酔のリスクを過剰に恐れても完治の機会を逃してしまいます。小型動物でも可能な限り検査して、飼い主様と相談して治療の方向性を決めることが大切です。

シマリス 腹腔内腫瘍 費用総額5〜6万円