症例集

2016.04.13更新

今回は ミニチュア・ダックスで多い椎間板ヘルニアの症例です。
 症状は後ろ足に力が入らず立てない、排尿できない、とのことでした。Mダックスの後ろ足ということで、まずは椎間板ヘルニアを疑いますが、後ろ足麻痺という症状のうち実際に椎間板ヘルニアであるのはおよそ85%程で残りは脊髄梗塞や脊髄腫瘍などの別の脊髄疾患になります。
 椎間板ヘルニアと別の脊髄疾患では全く治療法が異なるので、確実な診断をつけることが大切です。また椎間板ヘルニアであった場合はどの背骨間で発症しているのか?何カ所発生しているのか?左右どちらからの発生か?を明確にしなければ治療に進めません。こういった脊髄疾患の検査にはMRI検査が極めて有効です。
 MRI検査は脊髄そのものの状態を詳細に画像化してくれるので明確な診断が可能になります。欠点は検査に全身麻酔が必要になることと、数千万円する高度医療装置なので個人病院ではなかなか準備できないなどがあります。
 本院にもMRIは無いので本院ではキャミック検査センターさんにMRI撮影をお願いしております。キャミック検査センターさんは千葉市や都内などに複数あるため、非常に早く検査をしていただくことが可能です。
 脳や脊髄といった中枢神経は一度破壊されると二度と修復されることは無いので、完全麻痺などの症状はなるべく早く検査して治療に進むことが必要です。
 
 一般的に椎間板ヘルニアには重症度に応じてステージ分けがされていて治癒率もデータが出ています。

痛いだけ震えているだけの状態はステージ1 内科治療でも90%治癒 

後ろ足がふらつく ふらつくけど立って歩ける状態はステージ2 内科治療でも85%治癒

もはや立てない 後ろ足が麻痺して動かない状態はステージ3 内科治療で80%治癒 外科療法で90%治癒

排尿や排便ができない、後ろ足の皮膚をつねっても痛がらない(浅部痛覚の消失)状態はステージ4 内科療法で40%治癒 外科療法で85%治癒

後ろ足の指の骨をつまむように刺激を与えても痛がらない(深部痛覚の消失)状態はステージ5 内科治療ではほとんど治らない 外科療法では50%治癒

椎間板ヘルニアの場合は症状からステージ分類して治療方針を決定していきます。

痛みやふらつき程度の軽い椎間板ヘルニア(ステージ1〜2or±3)は一般的に内科治療がメインになります。内科療法は療法は基本的に絶対安静(とにかく絶対安静が一番大事!薬は補助的なものです)でビタミン剤や痛み止めなどを内服して、必要に応じて温熱療法などを加えていく方法です。順調に行けば数日から〜2週間程で改善してきます。

 完全に足腰が立たない中度から重度の椎間板ヘルニア(ステージ3〜5)には内科治療では治癒率が低いので外科療法が適応になります。外科療法は全身麻酔麻酔下で背中の筋肉を開いて背骨を露出して背骨の一部を削って脊髄を確認した後、実際に飛び出している椎間板物質を摘出して、脊髄を圧迫から解放します。手術後はスムーズに歩けるようになるまで積極的なリハビリを行っていきます。

犬 椎間板ヘルニア 手術前
手術前の後ろ足に力が入らず起立不能な状態。

犬 椎間板ヘルニア MRI画像
キャミック検査センターさんのMRI画像 今回は一カ所のみの椎間板ヘルニアでした。

犬 椎間板ヘルニア 手術中
背中の筋肉を開いて背骨を露出させます。

犬 椎間板ヘルニア 手術中2
背骨の一部を削り取って脊髄を確認し、その下から椎間板物質を摘出します。

犬 椎間板ヘルニア 手術後
手術後10日目(リハビリ7日目)背中の傷が痛々しいですが起立が可能になり、ふらつきは残りますが歩行も可能になりました。

 脊髄などの中枢神経はできるだけ早期に治療することが望ましく、適切な治療のためには正確な診断をつけることが必要になります。完全麻痺の椎間板ヘルニアであっても早期の外科療法で治る可能性もあります。

ミニチュアダックス 椎間板ヘルニア手術 入院から退院まで(だいたい手術後1週間〜3週間リハビリ入院含み)費用総額 18~25万円
 

投稿者: アプリコット動物病院

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