症例集

2016.04.13更新

今回の症例は猫ちゃんの泌尿器結石症です。猫ちゃんの結石症は下部尿路疾患として膀胱と尿道が一般的ですが、今回はその上部にある尿管と腎臓にも結石が認められました。
結石生成の原因として下部尿路結石の場合はストレスやバイ菌感染が原因で結石が生成されやすくなりますが、上部泌尿器の場合は体質的なものがほとんどです。
今回は膀胱にも結石が存在したため、頻尿や血尿といった症状がありましたが、単純な腎結石のみではあまり症状を示さないこともまれにあります。また生成される結石の種類も下部と上部では異なります。下部尿路結石は食事療法で溶かせる結石がほとんどですが、上部泌尿器の場合は残念ながらほとんどが食事療法では融けないタイプの結石です。

猫 尿管結石
腎臓尿管に結石が認められたら治療法もよく考えなくてはなりません。結石による痛みや血尿が激しい場合は結石を摘出する手術かあるいはすでに腎臓が機能していない状態ならば腎臓尿管摘出手術ということになります。しかも今回は両方の腎臓に結石が認められます。

猫 尿管結石
血液検査や造影レントゲンや超音波検査を用いて腎臓の状態を詳細に評価して方針を決めます。

猫 尿管結石 腎結石
今回は超音波検査で、尿管に結石が存在するために尿を膀胱に送れないため腎臓内に尿溜まり(腎盂拡張)が認められました。これを放置しておくと尿溜まりが広がり水腎症(腎臓が全く機能しない状態)になってしまうため、尿管結石と膀胱結石を摘出することにしました。腎結石は摘出しません。猫ちゃんは腎臓が小さいので腎臓を切って結石を摘出することによる腎機能障害の方がリスクが高いので腎結石は経過観察になります。腎結石は小さな物であれば腎臓に留まっていればそれほど悪さをしません。

猫 尿管結石 腎結石
左の尿管が右の尿管に比べて全長にわたり赤く腫れています。これは恐らく膀胱内にあった結石は、膀胱で生成されたのではなく、腎臓で生成されて、なんとか尿管を通り膀胱に落ちたものと考えられます。その過程で尿管が全長にわたり障害されたのでしょう。

猫 尿管結石 腎結石
無事に尿管結石と膀胱結石を摘出しました。あとは障害されていた尿管がうまく機能してくれるのを祈るのみです。腎結石は終生にわたり存在し続けるでしょう、これ以上腎結石が大きくならないように食事療法が必要になります。

 定期的な超音波検査で腎臓の尿溜まりも解消されているのが確認されました。軽度で早期手術すれば腎盂拡張も元に戻ります。今後は終生にわたる処方食や定期検診で腎結石を観察していく必要があります。

実際の手術では写真のようにレントゲンでは写らない砂利状の尿管結石が存在することがよくあります。尿管の奥の方に砂利が複数詰まっている事もよくあります。そのような場合は尿管を切除し膀胱に移植したり、尿管を腹壁に開口させたりと、結石と尿管の様子によりその場で術式を変更する事も良くあります。腎臓摘出や尿管ステント設置、尿管に大量の砂利があり使い物にならない時はバイパス手術に変更したりします。このように猫の尿管結石/腎結石の手術は極めて難易度の高い手術となり、手術時間が3時間を超えることもあります。

猫 腎結石 尿管結石 膀胱結石 摘出手術 入院から退院まで(だいたい7〜14日)費用総額20〜25万円

(単純な1箇所の尿管切開は18万円ほどですが、両側複数箇所だったり、尿管切除膀胱への尿管移植術、ステント設置やバイパス手術が必要な場合は25〜30万円ほどになります)

投稿者: アプリコット動物病院

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