症例集

2016.04.14更新

今回は脾臓の腫瘍の症例です。脾臓、あまり耳にする機会の無い名前ですね。
脾臓とは肝臓や腎臓と同じでお腹の中にある内蔵のひとつです。主に古くなった赤血球を破壊したり、免疫細胞を集めて育てたり、貧血の時には血液を作ったりもします。血液免疫系の臓器です。
 脾臓は臓器の中でも腫瘍の発生の多い臓器です。そして厄介な事になかなか症状が現れない臓器でもあります。
犬 脾臓腫瘍
今回の症例はレントゲン写真でお腹の中に縦9cm横11cmの巨大な腫瘍が発見されましたが、元気食欲もあり自覚症状は全く無く、この時も胸のしこりの検査でレントゲンを撮ったら偶然発見されたものです。
 脾臓のしこりにはデータが蓄積されており、最新の日本国内のデータでは脾臓にしこりが発見されたらおよそ4割は悪性腫瘍であり、その中でさらに5割ほどが極めて悪性度の高い血管肉腫(余命1~3ヶ月程度)であるというデータがあります。そして残念な事にレントゲンや超音波検査ではそれらの違いは鑑別不可能であり、確実に鑑別するためには実際に摘出する必要があります。放置すれば単なる血腫であっても次第に大きくなって破裂する可能性もあり、破裂すればお腹の中が血まみれになって突然死するケースもあります。
 臓器摘出となると抵抗があるかもしれませんが、脾臓は摘出しても問題ない臓器です。血液免疫系の働きはリンパ節や肝臓、骨髄などの別の臓器が働いてくれるので脾臓摘出後に問題が起きる事はまずありません。摘出して検査に出して診断をつけると同時に、何よりも完全摘出により治療も兼ねる事ができます。
 
犬 脾臓腫瘍
今回の症例の脾臓のしこりです、小児頭大はありました。摘出手術後数日で元気に退院していきました。
 脾臓はしこりがあってもなかなか症状が現れません、万が一極悪の血管肉腫であった場合は貧血・元気消沈などの症状が現れた時点で手遅れです、早期発見は健康診断などで発見するしかありません。
犬 脾臓腫瘍
別の症例の早期発見の例です、精密健康診断の超音波検査で脾臓に9.7mmのしこりが確認されました。大きくならないか定期的にチェックして大きくなるようなら検査と根治のために摘出も考えます。このように精密健康診断で臓器を超音波で細かく見れば1cm以下のしこりでも発見できます。6~7歳以上のペット達には精密健康診断をおすすめいたします。

 

小型犬 脾臓摘出 入院から退院まで(3〜7日、腫瘍の大きさ動物の全身状態による)費用総12〜15万円

投稿者: アプリコット動物病院

メールでのお問い合わせ