症例集

2016.04.13更新

今回はウサギさん(女の子)です

元気食欲はあるけど血尿とのことでした。
 ウサギさんは食事中の色素により、正常でも赤い尿をすることがあるので、まずは出血による赤い尿か?あるいは食事による赤い尿なのか?の鑑別が必要です。
 今回は尿検査により出血による赤い尿であることがわかりました。前回のように結石の可能性もあります、単純な膀胱炎でしょうか?しかしお年の女の子のウサギさんでは泌尿器由来ではなくて生殖器(子宮)由来の血尿が多く起きることが知られています。
 女の子のウサギさんは子宮の癌が非常に多いことが報告されています。避妊手術をしないでお年をとっていくと、実に3~4頭に1頭の割合で子宮癌になるという報告もあるくらいです。
 今回も避妊手術をしていないので子宮由来の出血を疑って検査しました。
ウサギ 子宮腺癌 レントゲン
 お腹の中に白い陰が認められ、腸が圧迫されています。白い陰は悪性腫瘍のカルシウム沈着の可能性があります。さらに超音波検査でお腹の中に液体の貯留及び大きな塊が確認されました。
 検査の結果やはり子宮腺癌の可能性が極めて高いので摘出手術をすることになりました。
麻酔前血液検査で出血による貧血も認められないので手術になりました。
ウサギ 子宮腺癌 手術

  全身麻酔下でお腹を切開したところお腹の中には液体が貯留しており、大きくなった子宮は一部既に破裂していました。破れた子宮から癌細胞・子宮内容物がお腹の中に漏れ出て腹膜炎になりかけていたようです。お腹の膜に1ヶ所しこりを見つけました。これは転移かもしれないので、しっかり切除しました。癌細胞がお腹の中に散っている可能性が高いのでお腹の中を洗浄して無事手術を終了しました。その日の夜には少しずつ食べるようになってきました。

 摘出した子宮とお腹の膜の一部は検査センターに送りました。
食欲も出てきたので一泊入院して次の日の午前中に退院しました。
 検査の結果はやはり子宮は癌でしたが、お腹の膜は転移ではなく腹膜炎の徴候でした。
 ウサギの子宮腺癌は避妊手術をしていない高齢のウサギさんに好発します。比較的成長の遅い腫瘍ですが、放置すれば腸の圧迫による食欲不振、内蔵や肺への転移によりやがては衰弱して命を奪います。
人間や犬猫と違い抗癌剤はウサギさんでは非現実的です。今回の症例も今後は転移の定期チェックと自分の免疫力を高める食事療法などが治療のメインになってきます。
 また、ウサギさんは草食獣なので病気の末期になるまで食欲は落ちない子が多いです。食欲があるからといって様子を見ていると手遅れになることもあります。今回の症例も既に子宮は破裂しており、危険な状態でした、でも食欲は落ちていませんでした。異常を感じたら様子を見ずに受診するようにしましょう。

ウサギ 子宮腺癌 入院から退院までの費用総額 8〜10万円

投稿者: アプリコット動物病院

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