症例集

2016.09.13更新

今回は消化管の病気です。

下痢や吐き気は実に様々な理由で生じます、単なる拾い食いや急な食事変更による食あたりからストレス性胃腸炎、寄生虫感染、膵臓や肝臓・腎臓といった内臓疾患、胃腸の腫瘍などなど原因は山ほど考えられます。

今回のリンパ管拡張症・リンパ球ー形質細胞性腸炎とは胃腸そのものの病気です。この2つの病気は蛋白漏出性腸疾患とも言われ、あまりにも症状がひどく長期化すると食べたフードのタンパク質が吸収できずに下痢とともに体外に排泄されてしまいます。そうするとしっかり食べているにもかかわらず、栄養失調状態(タンパク質欠乏)になり、お腹に水が貯まってきます(腹水貯留)。

まずリンパ球ー形質細胞性腸炎はリンパ球・マクロファージ・形質細胞などの様々な炎症細胞が胃腸の粘膜に浸潤して嘔吐や下痢などの機能障害を起こす病気です。原因は胃腸粘膜の免疫機構の欠陥と言われていますが、なぜ免疫機構に欠陥が生じるのか?など正確な原因メカニズムは明確にされていません。

リンパ管拡張症は腸内のリンパ管の流れが悪くなってしまい、腸の機能不全を起こす病気です。リンパ液の流れが悪くなる原因は心臓病など胸の中の問題で全身のリンパ液の流れが悪くなる場合もまれにあるようですが、一般的にリンパ管拡張症の大多数が前述のリンパ球ー形質細胞性腸炎による腸の炎症の結果起こるとも言われています。

診断方法は一般的な下痢止めや吐きどめに反応がなく、血液検査で典型的な低タンパクなどの所見が得られ、その他の内臓疾患や腫瘍性疾患が否定されれば、リンパ管拡張症・リンパ球ー形質細胞性腸炎の疑いが強くなります。しかし確定的に診断を下すのであれば全身麻酔下での胃カメラ(内視鏡)検査が必要になります。胃カメラで胃や小腸から腸粘膜の一部を採取して検査センターに送ります。細胞レベルで調べてもらい腸粘膜内に炎症細胞の浸潤やリンパ管の拡張が認められれば確定診断となります。胃カメラはお腹を切り開くことなく検査できるので日帰りもしくは1泊程度の入院で済みます。

 

IBD

胃カメラでリンパ球ー形質細胞性腸炎及びリンパ管拡張症と診断された写真。

治療はまずは負担のない治療法として食事療法です、なるべく低脂肪の食事を与えます。食事療法で不十分な場合は、腸内細菌を整える抗生物質や炎症を抑えるステロイドを主体とした内服治療になります。一般的な食事療法や内服治療に反応がない重症例は強力な免疫抑制剤や完全脂肪除去食を飼い主様の手作りで与えてもらう必要もあります。治療に反応して症状が治まってくれば内服薬は必要最低限まで少しずつ減量していきますが、基本的には完全に治療をやめると再発します。終生にわたる治療が必要になります。

一般的な治療に反応しない嘔吐や下痢は単純な食あたりや寄生虫などではなく腸そのものが原因である可能性があります。お気軽にご相談ください。

小型犬 胃カメラによる胃腸粘膜採取 細胞病理検査 日帰り〜一泊 費用総額 5〜6万円

投稿者: アプリコット動物病院

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