症例集

2017.02.15更新

今回はウサギさんの食欲不振のお話です。

ウサギさんが体調悪そう、元気が無い、食欲がない、などといった症状の場合は一般的に80%が胃腸の問題だと言われています。残り10%は歯の問題で、残りの10%はその他の臓器が問題です。

今回はウサギさんの体調不良の80%の原因をしめる胃腸の問題(消化器失調)のお話です。

完全草食動物であるウサギさんは胃腸及び腸内細菌が命であり、チョットした事ですぐに胃腸の調子が崩れます。すなわち食事の急な変更、食べなれないオヤツの多給、段ボールやカーペットなど異物の誤食、様々なストレス、などが原因として考えられます。しかし最も多いであろう原因は日常の毛づくろい時に自身の毛を飲み込んでしまい、その毛玉によって胃腸の調子が崩れる事です。

ウサギさんは完全草食動物であり、その胃腸の構造から吐き戻すという行為ができません。猫ちゃんなら飲み込んだ毛玉は吐き戻すことができますが、ウサギさんは飲み込んでしまった毛玉は吐き戻すことができず、便から出すだけになります。そのため、あまりに多くの毛玉を飲み込んでしまうと胃腸の調子が崩れ、最悪の場合、胃腸が完全に詰まってしまう事もあります。

胃腸の流れが悪くなると、当然食欲や元気が無くなります、また便の粒の大きさが小さくなり繋がって出てきたり量も減ってきてます、お腹が痛いのでお腹を床に擦り付けたりする行為をする事もあります。

ウサギ正常腹部正常ウサギのレントゲンです、胃の大きさは空腹時であればこの程度ですし、食後なら肋骨の切れ端から胃が少し出る程度です。

ウサギ毛球症レントゲン胃腸閉塞のレントゲンです、丸2日食べてないのに胃がパンパンに膨れています!二日前に食べたご飯が胃から小腸に流れないでいるのです!!胃腸の流れが停止ているのでしょう。かなり危険な状態です。

治療方針は、今にも破裂しそうでなければ、まずは内科治療から入ります。胃腸の動きを活性化する注射と水分補給の点滴をします(点滴は脱水症状の改善と血液量を増やし胃腸への血流を増やすのが目的です)。なるべく通院してもらいます、病院に入院することがストレスになりますので連日通院可能であれば通院で治療します。食欲が戻るまで2日でも3日でも連日通院してもらいます。食欲が出るまではとにかく何でも美味しいものを与えてもらいます、第1選択はセロリやブロッコリーの茎や大根の葉の部分です、これらは食物繊維が豊富でウサギさんの栄養バランスをよく満たしてくれるからです、しかしそれを食べない場合は第2選択はレタスやキャベツなどの葉物です、それもダメなら第3選択にニンジンやサツマイモやリンゴなどを与えてもらいます、さらにダメならウサギ用ビスケットやドライフルーツを与えます(日常的に与えるのはヤメましょう、病気の時だけ与えましょう)。とにかく胃腸をドンドン動かさないといけませんから何でも与えてもらいます。便が出るようになって食欲が50%を超えてきたらあとは飲み薬に切り替えて通院終了です。

この治療で実に90%以上の確率で治ります(私の経験上)!早ければ次の日には食欲が戻る子もいますし、時間がかかる場合には2〜3日かかりますが90%の症例でこの単純な内科治療で治っています。上のレントゲンの子も3日ほどの通院で食欲が出てきました!

しかしながら、中には内科治療に全く反応しない症例もいます、そうなると外科手術で胃腸の閉塞を解除しないと助かりません!!

本院ではまずは内科治療を1〜3日試みます。全く回復の兆しがなく元気が無くなっていくのに内科治療をだらだらやっていてはいけません。外科手術に踏み切る前にバリウムを少しだけ飲ませて胃腸の流れを画像で確認します、そしてバリウムが全く動かない場合は完全閉塞ということになります。

ウサギ バリウムバリウムを飲ませて24時間経過したレントゲンです。

バリウムが全く胃から出て行きません。胃の膨らみ具合は先ほどのレントゲンの子ほどではありませんが、完全閉塞しているようです、手術をしないと次第に衰弱し亡くなってしまうのは明白です。

ウサギ毛球症手術全身麻酔下でお腹を切り開いて、胃を切開して中の毛玉を摘出して胃腸の開通性を確認し洗浄して閉じます。

ウサギ毛球症手術後取り出した毛玉です。3−5日入院し、食欲が安定したら退院です。

ウサギさんは基本的に春と秋に換毛期を迎えます。換毛期にはたくさん毛が抜けます、それを飲み込んでしまい胃腸の調子が崩れるので、特に換毛期にはたっぷりブラッシングして飲み込んでしまう毛玉を少しでも減らしましょう。長毛種のウサギさんは常日頃からブラッシングをよくしましょう。

ウサギさんは完全草食動物であり、メインとなる必要栄養素は食物繊維です。食物繊維含有量の多い牧草とウサギ用ペレットと水があれば実は生野菜は与えなくても全く問題ありません。しかしながらオヤツとして生野菜を与えるならば前述した通り食物繊維の豊富なブロッコリーの茎やセロリや大根の葉の部分がおすすめです。キャベツやレタスなどの葉物は食物繊維があまり豊富とは言えませんし柔らかくて歯の健康にも疑問です。ウサギ用ビスケットやドライフルーツなどはあまり食物繊維が多くないですし甘く柔らかいのでウサギさんに適したオヤツとは言えません。与えすぎに注意しましょう。あとは適度な運動と様々なストレスを減らす工夫をして消化器失調を予防していきましょう。

ウサギ 毛球症 胃切開手術 3〜7日入院 費用総額 10万円程度 

投稿者: アプリコット動物病院

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