症例集

2017.02.08更新

今回は舌の腫瘍です。

13歳のミニチュアダックスが食欲がない、よだれが多い、緑色のよだれが出る!?とのことで来院しました。

吐き気がする場合にもよだれが多く出ますが、緑色っぽいよだれとのことでしたので口の中に腫瘍でもあるのかなと思い口の中をよく見てみますが何もありませんでした。

でも確かに異常によだれが多いのでガッと口を大きく開けて見ると、舌の奥に巨大な腫瘍がありました。喉全域を占めるほどの巨大な腫瘍でした。こんなものがあったら確かに食べられないよな、、、治療方針は外科手術で摘出するか放射線治療で腫瘍を小さくして再び自力で食べられるようにするか(癌に対抗する治療で手術や放射線による体へのダメージを伴う)、あるいは自力採食を諦めて食道チューブや胃瘻チューブを設置して口を使わずに食べれるようにする(癌と共存していく治療で体へのダメージは非常に少ない)か、、、13歳という年齢を考えると悩ましいです。

口腔内腫瘍で2〜3cmを超えてくると、広範囲に切除手術することが困難なことが多く、手術で痛い思いをしても根治は難しい可能性がある。放射線治療も大学病院に頻繁に通いその都度全身麻酔が必要になり、放射線治療も同様に根治は困難なことが多い。

飼い主様とよく相談させていただいて、今回は外科手術で腫瘍の切除に挑むことにしました。

切除の方法は根治を目指して舌の全切除をするか(舌が無くなるために摂食障害が出るので食事の与へ方を工夫する必要がある)あるいは腫瘍のくっついてる舌の表面を切除するか、、、高齢なのでなるべく体へのダメージを少なくしたいとのことで、舌全切除ではなく、舌部分切除をすることにしました。

舌腫瘍1舌腫瘍2

 

こんな感じで舌の根元に存在していました、口を大きく開けて舌を引っ張り出さないと見れませんでした。写真は麻酔中なのでしっかり見えますが、普段の起きてる時は確認困難です。巨大化して症状が出るまで発見できなくても仕方がないです、、、このくらい巨大化してようやく症状が出るのです。

舌腫瘍手術舌腫瘍手術後

腫瘍だけではなく正常な舌も少し含め腫瘍を完全に摘出して縫い合わせました。抜糸の必要ない吸収糸で縫合します。ついでなので歯石も取りました。

手術後は3日ほど舌を使わせないように鼻カテーテルを設置して流動食を与え、4日目位から自力での採食に切り替えました。手術の影響で舌は少し曲がってしまいましたが、舌の部分切除だったため摂食障害は無く、バクバク食べるので退院としました。

病理検査の結果は悪性黒色腫(メラノーマ)で、癌は完全切除されているが癌細胞が血管の中に浸潤している、とのことでした。口腔内メラノーマは極めて悪性度が高い腫瘍で、血管に浸潤しているとなると今後肺転移が予想されます。今後の治療として抗癌剤をどうするか、、、と悩みましたが、手術後劇的に状態が改善し、よだれも無くなりものすごい元気になってものすごく良く食べるので、肺転移を抑えてさらなる延命を期待して抗癌剤をすることにしました。

抗癌剤は3週間毎に1日だけ日帰り入院して点滴するタイプの抗癌剤を計6回実施しました。抗癌剤中の数ヶ月、大きな副作用で苦しむこともなく経過し、無事抗癌剤も卒業できました!その後は肺転移が起きないか、舌に再発しないか、定期検診することになりました。

その後なんと手術から2年4ヶ月、再発も肺転移もすることなく15歳になり今も元気にしてます。手術をしなければ食べれずに苦しんで数週の命だったかもしれません。

口腔内悪性腫瘍、特に口腔内メラノーマは悪性度が高い癌で、手術や抗癌剤を実施しても比較的早期に再発や転移が起きてしまいます。今回も腫瘍の大きさ、存在位置、病理検査で血管内に癌浸潤が認められたため、正直今回も長期的見通しは長くないかも、、、と思いましたが諦めずに治療して本当に良かったです。

 

小型犬 舌腫瘍 舌部分切除手術 鼻カテーテルor食道チューブ設置 入院から退院まで費用総額 8〜12万円 (舌の切除範囲、腫瘍の大きさによる)

舌の小さなポリープ程度なら日帰りで3〜4万円

 

投稿者: アプリコット動物病院

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