症例集

2017.10.25更新

今回はワンちゃん猫ちゃんの健康診断のお話です。いわゆる人間ドックではなくペットドックですね。

本院は健康診断に2つのコースを設けています。

①血液検査のみのコース ±甲状腺ホルモン測定etc 所要時間は数分なので予約不要

②血液検査 胸部・腹部レントゲン 心臓・腹部超音波検査 便検査 尿検査のフルコース ±甲状腺ホルモン測定etc 要予約(午前預かり午後お迎え) 追加で脚など別部位のレントゲン撮影や別のホルモン測定なども同時に可能です。

 

①血液検査のみのコースは採血して、血液を外部の検査センターに出して検査してもらいます。採血だけなので所要時間は数分で終わります。

 貧血の有無/白血球数/血小板数/などを測定します、造血機能・骨髄系統の簡易検査とも言えます。

 内臓系の検査として 肝臓/腎臓/中性脂肪/コレステロール値/血中タンパク量/血中カルシウム量/血糖値などを調べます。

 一般的に血液検査は若いワンちゃん猫ちゃんの全身状態を参考程度に知りたい、、、というレベルでお考え頂きたいと思います。

 血液検査ですべて正常だったので全身に全く問題がない、、というわけではありませんのでご注意くださいませ。

 例えば血液検査で肝臓の数値が正常でも超音波検査で肝嚢胞や初期肝臓癌が見つかることはありますし、腎臓にいたっては例えば片方の腎臓が結石などで全く機能していなくても、もう片方の腎臓が元気であれば数値は上がりません。血管豊富で腫瘍ができやすい脾臓に異常があっても異常の現れる検査項目はありません。

 人間医学では血液検査だけである程度の癌の存在を推定できる癌マーカーというものがありますが、動物医療では2017年10月現時点では血液検査である程度の癌を推定でき、且つ各獣医大学や2次診療施設の腫瘍科で採用されている信頼性のある癌マーカーは存在しません。

 ですので、血液検査コースはあくまでも、簡易的に手軽に全身状態を把握しておきたい程度にお考え下さい。

 

甲状腺ホルモン測定はお年を召したワンちゃん猫ちゃんにオススメしております、お年を召したワンちゃんは最近寝てばかりいる・太ってきた・毛が薄くなってきた・・・など、年を取ってくれば、ある程度は仕方がない症状ですが、実は甲状腺機能低下症という病気の可能性もあります。

動物の新陳代謝を司るホルモン量が低下して、活動量が低下し寝てることが増え太りやすくなり、体温も落ち、心拍数も下がり、被毛も薄くなるなどの症状を示す病気です。甲状腺ホルモンを測定することで診断可能できます、足りない甲状腺モルモンを内服で補うことで症状は改善します。

そしてお年を召した猫ちゃんでは、低下症とは逆で、甲状腺機能亢進症と言って、新陳代謝を司る甲状腺ホルモンが出すぎてしまう病気があります。

食欲が旺盛でよく食べる、その割に痩せてくる、夜に寝ないで大きな声あげて走り回っている、、、などが主症状です。これも年だから認知症かしら!?なんて見過ごされることが多くあります。これも甲状腺ホルモンを測定することで診断できます。甲状腺ホルモンを抑える薬を内服することで落ち着きを取り戻し、食欲が安定し。体重も増えてきます。

高齢のワンちゃん猫ちゃんには甲状腺ホルモン測定をお勧めしております。

 

②血液検査 胸部・腹部レントゲン撮影 心臓・腹部超音波検査 眼科検査 便検査 尿検査 のフルコース

獣医師としては当然こちらをお勧めします、健康診断を受けようと思うならやはりしっかり調べるべきでしょう。

血液検査は前述の通りです。

犬 正常レントゲン ラテラル犬 レントゲン撮影 ラテラル

犬 正常レントゲン VD犬 レントゲン撮影 VD本院の看板犬 春子ちゃんのレントゲンです。

レントゲンでは 主に背骨の状態、各臓器の位置関係や大きさ、心臓のサイズ、肺の様子、結石の有無などを評価します。

超音波検査では心臓〜腹部臓器の内部構造、腫瘍の有無、動き、血液の流れなど、をリアルタイムで評価できます。

犬 超音波検査犬 心臓超音波検査心臓超音波です。心臓の壁の動き、弁の動き、心臓の各部屋のサイズ、血液の流れ(赤が左心房から左心室へ入る血流、青が左心室から大動脈へ流れる血流)を評価できます。

肝臓 超音波こちらは肝臓と胆嚢の超音波画像です。レントゲンでは内部構造までは評価できませんでしたが、超音波で内部構造を評価します。1cm以下の腫瘍も検出できます。

犬 目の検査目の検査では 白内障や緑内障やドライアイなどのチェックをします。

尿検査は 尿の濃さ、血尿や尿糖の有無、結石症の有無を確認します。

尿検査 結晶尿検査で四角い結晶(結石の前段階)が確認されることもあります。また、尿の濃さは腎機能の指標にもなります。腎機能の低下の場合は尿の濃さを調べることで血液検査よりも早く異常が現れます。

犬 身体検査犬 身体検査2犬 採血

あとは聴診器当てたり、歯石のチェックしたり、血液検査のための採血です。春子ちゃんはお利口なので一人で採血できちゃいます。

 

健康診断フルコースはこのような形で進行していきます。1日の中で時間を見つけて実施していくため基本的に午前中にお預かりして夕方以降のお迎えの完全予約制になります。

健康診断をするのであれば、このような健康診断フルコースをお勧めいたします。

 

そしてよく聞かれるのが、、何才くらいから健康診断受ければいいんですか??年に一回でいいんですか??という質問です。

これは非常に悩ましい問題です、人間ドックは一般的に成人して企業に就職してから企業健診で受けるのが多いのかもしれません、これはワンちゃん猫ちゃんに置き換えると2才位から!?しかしながら実際に健康診断をしていて、2才で異常が見つかるワンちゃん猫ちゃんは極めて稀です。若いうちに心臓や他臓器に異常がある場合はそれは先天的異常(生まれながらの異常)の可能性もあります、また健康であることを知ることも目的なので、本院では全年齢で若くてもフルコースをお勧めします。

では年に一回でいいのか??という問題ですが、人間の人間ドック学会では年に一回を推奨しているようです。では再びこれをワンちゃん猫ちゃんに当てはめると、、、ワンちゃん猫ちゃんの寿命を考慮すると、ワンちゃん猫ちゃんの1年は人間の4〜5年に相当すると考えられます、、、そうするとワンちゃん猫ちゃんは4ヶ月に一回健康診断受けることが推奨される!?、、理論上はそうなんですけどね、、、確かにワンちゃん猫ちゃんの悪性度の高い癌なんかは2〜3ヶ月で急速に進行していくものもあります。健康診断で異常がなくて、3ヶ月後に腫瘍になった猫ちゃんもいます。そう考えると4ヶ月に一回健康診断を受ければ癌でも早期発見できるという理論になりますが、、しかし健康診断も決して安い検査ではないし、ワンちゃん猫ちゃんにストレスもかかるので、実際は年に一回は推奨するという感じでしょうか。。。

春子春子ちゃん、お疲れ様でした!健康診断の結果は特に異常は認めませんでした!!

 

 

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

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