症例集

2016.04.13更新

今回の症例は 眼球、角膜に発生した傷に対する手術です。
 
角膜はご存知の通り、物を見る(光を通す)という機能のために無色透明の1mm以下の薄い膜で、栄養を運ぶ血管が存在しない組織です。ですので治りが悪く深く傷ついてしまうと破けてしまい最悪失明してしまう場合もあります。角膜の傷の原因としてはお散歩中に草むらで傷つけた、同居犬と喧嘩した、目が痒くって自分で擦って傷つけた・・など様々です。角膜の傷は浅ければ適切な点眼治療で完治しますが、より深い傷には破れてしまわないように手術も必要になります。
 
 今回はかなりお年を召したワンちゃんで、ホルモンバランスの乱れにより角膜潰瘍が通常の点眼療法で治癒せずにどんどん傷が深く広くなってしまい角膜が破れる寸前(デスメ膜瘤)になってしまったために手術になった症例です。ワンちゃんも高齢になるとホルモンバランスが崩れる病気になることがあります。このワンちゃんはストレスホルモンが出過ぎてしまう病気であり、それにより免疫力が低下し傷の治りが悪くなって角膜の傷が広がってしまったと考えられます。ですのでストレスホルモンを抑える内服を飲みながら手術になりました。

 前述のように角膜には血管が存在しない薄い膜なので、深い傷は破けてしまう恐れがあります。それを補うために、血管が豊富な結膜を角膜の傷の上に移植して傷を埋めて、その結膜の血管から角膜に栄養を与え傷を治すというメカニズムです。

犬 結膜フラップ 手術前
中央に大きく深い角膜潰瘍があります(デスメ膜瘤)、放置すれば角膜が破けてしまうでしょう。

犬 結膜フラップ 手術

このように血管豊富な結膜を角膜の傷の上にに縫い付けます。角膜は1mm以下の薄い膜なので縫合糸も髪の毛ほどの細い糸を使用します。とても繊細な手術です。

 

犬 結膜フラップ 手術後
手術から1ヶ月後、移植した結膜は角膜に癒着し一体化しました。視界は悪いですがもう角膜が破れる心配はないでしょう。

 

犬 結膜フラップ  一ヶ月後
その後、移植した結膜の根元を切り離します。角膜と一体化している残った結膜は小さくなっていきます

 角膜は簡単に傷つく脆い膜で、血管が無いため治るのにも時間がかかります。目は2つあるため片方が失明してもワンちゃんの生活はあまり変わらず普段通り過ごせます。しかし両目が失明すると物にぶつかったりするようになり、楽しいお散歩も積極的にできなくなります。
 ワンちゃんが目を眩しそうにしていたり、痒がったり充血していたりしたらあまり様子をみないでお気軽にご相談ください。

犬 結膜フラップ手術 入院から退院まで費用総額 12~15万円

投稿者: アプリコット動物病院

2016.04.13更新

今回は ミニチュア・ダックスで多い椎間板ヘルニアの症例です。
 症状は後ろ足に力が入らず立てない、排尿できない、とのことでした。Mダックスの後ろ足ということで、まずは椎間板ヘルニアを疑いますが、後ろ足麻痺という症状のうち実際に椎間板ヘルニアであるのはおよそ85%程で残りは脊髄梗塞や脊髄腫瘍などの別の脊髄疾患になります。
 椎間板ヘルニアと別の脊髄疾患では全く治療法が異なるので、確実な診断をつけることが大切です。また椎間板ヘルニアであった場合はどの背骨間で発症しているのか?何カ所発生しているのか?左右どちらからの発生か?を明確にしなければ治療に進めません。こういった脊髄疾患の検査にはMRI検査が極めて有効です。
 MRI検査は脊髄そのものの状態を詳細に画像化してくれるので明確な診断が可能になります。欠点は検査に全身麻酔が必要になることと、数千万円する高度医療装置なので個人病院ではなかなか準備できないなどがあります。
 本院にもMRIは無いので本院ではキャミック検査センターさんにMRI撮影をお願いしております。キャミック検査センターさんは千葉市や都内などに複数あるため、非常に早く検査をしていただくことが可能です。
 脳や脊髄といった中枢神経は一度破壊されると二度と修復されることは無いので、完全麻痺などの症状はなるべく早く検査して治療に進むことが必要です。
 
 一般的に椎間板ヘルニアには重症度に応じてステージ分けがされていて治癒率もデータが出ています。

痛いだけ震えているだけの状態はステージ1 内科治療でも90%治癒 

後ろ足がふらつく ふらつくけど立って歩ける状態はステージ2 内科治療でも85%治癒

もはや立てない 後ろ足が麻痺して動かない状態はステージ3 内科治療で80%治癒 外科療法で90%治癒

排尿や排便ができない、後ろ足の皮膚をつねっても痛がらない(浅部痛覚の消失)状態はステージ4 内科療法で40%治癒 外科療法で85%治癒

後ろ足の指の骨をつまむように刺激を与えても痛がらない(深部痛覚の消失)状態はステージ5 内科治療ではほとんど治らない 外科療法では50%治癒

椎間板ヘルニアの場合は症状からステージ分類して治療方針を決定していきます。

痛みやふらつき程度の軽い椎間板ヘルニア(ステージ1〜2or±3)は一般的に内科治療がメインになります。内科療法は療法は基本的に絶対安静(とにかく絶対安静が一番大事!薬は補助的なものです)でビタミン剤や痛み止めなどを内服して、必要に応じて温熱療法などを加えていく方法です。順調に行けば数日から〜2週間程で改善してきます。

 完全に足腰が立たない中度から重度の椎間板ヘルニア(ステージ3〜5)には内科治療では治癒率が低いので外科療法が適応になります。外科療法は全身麻酔麻酔下で背中の筋肉を開いて背骨を露出して背骨の一部を削って脊髄を確認した後、実際に飛び出している椎間板物質を摘出して、脊髄を圧迫から解放します。手術後はスムーズに歩けるようになるまで積極的なリハビリを行っていきます。

犬 椎間板ヘルニア 手術前
手術前の後ろ足に力が入らず起立不能な状態。

犬 椎間板ヘルニア MRI画像
キャミック検査センターさんのMRI画像 今回は一カ所のみの椎間板ヘルニアでした。

犬 椎間板ヘルニア 手術中
背中の筋肉を開いて背骨を露出させます。

犬 椎間板ヘルニア 手術中2
背骨の一部を削り取って脊髄を確認し、その下から椎間板物質を摘出します。

犬 椎間板ヘルニア 手術後
手術後10日目(リハビリ7日目)背中の傷が痛々しいですが起立が可能になり、ふらつきは残りますが歩行も可能になりました。

 脊髄などの中枢神経はできるだけ早期に治療することが望ましく、適切な治療のためには正確な診断をつけることが必要になります。完全麻痺の椎間板ヘルニアであっても早期の外科療法で治る可能性もあります。

ミニチュアダックス 椎間板ヘルニア手術 入院から退院まで(だいたい手術後1週間〜3週間リハビリ入院含み)費用総額 18~25万円
 

投稿者: アプリコット動物病院

2016.04.13更新

今回の症例は9歳の男の子の猫ちゃんです。
数年前から尿道閉塞を繰り返しているとのことでした。尿路結石用の処方食をしっかり食べているのですが、お外にも行ってしまう猫ちゃんであり、再発を繰り返しているようです。
 今回は包皮が著しく腫れていて、陰茎も同様に酷く腫れていました。自分で舐めてしまったのか、あるいは過去に何度も尿道カテーテル処置をされているせいなのか、いずれにせよ外尿道口は確認困難で、尿がポタポタ滴下するだけでした。
猫 会陰尿道増瘻術

プラスチック製のカテーテルをなんとか通して貯まっていた尿を排尿させて膀胱を洗浄しました。
治療としては、これ以上陰茎を舐め壊さないようにエリザベスカラーをつけて完全室内飼いにして、腫れを引かすお薬を投与してみることになりました。

 三日後やはり尿はポタポタとしか出ず、包皮・陰茎の腫れは全く改善ありませんでした。
飼い主様と相談して、内科療法では全く改善しないので手術することになりました。
 手術(会陰尿道造瘻術)は著しく腫れてしまって尿道閉塞の原因となっている陰茎先端を切除して、広い尿道をお尻に開口させ尿道閉塞再発を防止るという方法です。
猫 会陰尿道造瘻術

手術によって、3mmを超える太いカテーテルが容易に入るようになります、しかし尿を垂れ流すことにはなりません、自分の意思でしっかり排尿できます。数日間カテーテルを入れっぱなしにするため入院となりますが、今後は尿道閉塞が再発することはなくなります。

 男の子の猫ちゃんの尿道閉塞はとても多い病気です。適切な生活環境と徹底した食事療法により、一般的には内科療法で再発防止が可能です。しかしながら、大きな結石で尿道が完全に閉塞している場合や今回のように尿道の損傷が著しい場合やお外に出てしまって食事管理や生活環境管理が困難な場合は、このような手術で再発を防止することも一つの手段です。

猫 会陰尿道増瘻術 入院から退院までの費用総額 12〜15万円前後

投稿者: アプリコット動物病院

2016.04.13更新

今回は7歳のシマリスさんの巨大腹腔内腫瘍の症例です。
シマリスさんは本来、本院の診察対象動物ではありませんが、他に診てくれるところが無いとのことで来院しました。

症状は陰茎が包皮から出っぱなしで戻らない とのことでした。
一般的に包皮内にバイ菌などが入って感染したりすることで起きます。シマリスさんは本来お利口に診察させてくれる動物ではありませんが、今回のこのシマリスさんは全く抵抗せずに診察させてくれました。
これは陰茎が出っぱなしというだけではなく、何か重大な全身疾患を抱えている可能性がありますので、後日詳しく調べてみたら、お腹の中に水が貯まっており、巨大な腫瘤が確認されました。年齢的にも腫瘤は癌である可能性が高く、治療としては摘出するか否かということになります。

ウサギ・ハムスターなどの小型動物は、癌に対して点滴抗癌剤や放射線療法などは非現実的であり、実際はリスクは高いが外科手術によって摘出するか?あるいは免疫増強剤などで癌と供に生きていくか?の選択になります。

人間や犬猫であれば、麻酔前にしっかり血液検査して、麻酔中も血圧などの生体情報を詳しくチェックして安全に麻酔は行われますが、ハムスター位の小型動物になると麻酔前の血液検査も困難ですし、麻酔中の生体管理も限界があり、麻酔も単純にマスクによるガス麻酔になります。ですので外科手術は症例によってはかなりリスクの高いものになります。
ハムスター以下の小型動物では動物の年齢、全身状態、無治療の場合の生活の質、手術の難易度などにより飼い主様と相談して手術に挑むかどうか決めることになります。

今回は超音波検査で腎臓や肝臓などの各種臓器にくっついている所見は無く、摘出は可能と思われました。しかし全身状態があまり良くないのでリスクの高い手術になります。
そして今回は飼い主様と相談して手術に挑むことになりました。
シマリス 手術前
(お腹の中の腫瘤が左脇腹に白い塊として見えています。)
シマリス 手術中
(腫瘤の全貌が見えます)
シマリス 手術後
(無事に摘出できました!)
シマリス 腫瘤
(腫瘤は病理検査の結果、精巣の癌であることがわかりました)

今回は無事に手術が成功し、傷口舐めないようにエリザベスカラーをつけてその日のうちに退院しました。陰茎の突出も無くなりました。腫瘤は検査の結果、精巣の癌であることがわかりました、手術後抗癌剤もできない小型動物なので今後はアガリクス配合フードなどで免疫力を高めて生活するようになります。

ハムスター以下の小型動物はその体の小ささから思うように治療できないことが多くあります。
無謀な手術をすることは出来ませんが、しかし麻酔のリスクを過剰に恐れても完治の機会を逃してしまいます。小型動物でも可能な限り検査して、飼い主様と相談して治療の方向性を決めることが大切です。

シマリス 腹腔内腫瘍 費用総額5〜6万円

投稿者: アプリコット動物病院

2016.04.13更新

今回は歯石除去の紹介です。
加齢とともに蓄積していく歯垢・歯石は歯肉に炎症反応を起こし歯肉炎へと進行していきます、放置しておくと、歯が抜け落ちてしまい最悪の場合流動食しか食べられなくなることもあります。衛生的な口腔内環境を保つことでワンちゃんの口臭も無くなり、いつまでも美味しく歯応えのあるものが食べられるようになります。
 
一度付いてしまった歯石を除去して口臭を無くすには、奥歯の裏や歯周ポケットまで綺麗に磨く必要があります。奥歯の裏や歯周ポケットまで磨くには無麻酔ではまず不可能です。

歯石除去のbefore afterです。

歯石除去 処置前

 

歯石除去 処置後

お気軽にご相談ください。

 

投稿者: アプリコット動物病院

2016.04.13更新

今回はウサギさん(女の子)です

元気食欲はあるけど血尿とのことでした。
 ウサギさんは食事中の色素により、正常でも赤い尿をすることがあるので、まずは出血による赤い尿か?あるいは食事による赤い尿なのか?の鑑別が必要です。
 今回は尿検査により出血による赤い尿であることがわかりました。前回のように結石の可能性もあります、単純な膀胱炎でしょうか?しかしお年の女の子のウサギさんでは泌尿器由来ではなくて生殖器(子宮)由来の血尿が多く起きることが知られています。
 女の子のウサギさんは子宮の癌が非常に多いことが報告されています。避妊手術をしないでお年をとっていくと、実に3~4頭に1頭の割合で子宮癌になるという報告もあるくらいです。
 今回も避妊手術をしていないので子宮由来の出血を疑って検査しました。
ウサギ 子宮腺癌 レントゲン
 お腹の中に白い陰が認められ、腸が圧迫されています。白い陰は悪性腫瘍のカルシウム沈着の可能性があります。さらに超音波検査でお腹の中に液体の貯留及び大きな塊が確認されました。
 検査の結果やはり子宮腺癌の可能性が極めて高いので摘出手術をすることになりました。
麻酔前血液検査で出血による貧血も認められないので手術になりました。
ウサギ 子宮腺癌 手術

  全身麻酔下でお腹を切開したところお腹の中には液体が貯留しており、大きくなった子宮は一部既に破裂していました。破れた子宮から癌細胞・子宮内容物がお腹の中に漏れ出て腹膜炎になりかけていたようです。お腹の膜に1ヶ所しこりを見つけました。これは転移かもしれないので、しっかり切除しました。癌細胞がお腹の中に散っている可能性が高いのでお腹の中を洗浄して無事手術を終了しました。その日の夜には少しずつ食べるようになってきました。

 摘出した子宮とお腹の膜の一部は検査センターに送りました。
食欲も出てきたので一泊入院して次の日の午前中に退院しました。
 検査の結果はやはり子宮は癌でしたが、お腹の膜は転移ではなく腹膜炎の徴候でした。
 ウサギの子宮腺癌は避妊手術をしていない高齢のウサギさんに好発します。比較的成長の遅い腫瘍ですが、放置すれば腸の圧迫による食欲不振、内蔵や肺への転移によりやがては衰弱して命を奪います。
人間や犬猫と違い抗癌剤はウサギさんでは非現実的です。今回の症例も今後は転移の定期チェックと自分の免疫力を高める食事療法などが治療のメインになってきます。
 また、ウサギさんは草食獣なので病気の末期になるまで食欲は落ちない子が多いです。食欲があるからといって様子を見ていると手遅れになることもあります。今回の症例も既に子宮は破裂しており、危険な状態でした、でも食欲は落ちていませんでした。異常を感じたら様子を見ずに受診するようにしましょう。

ウサギ 子宮腺癌 入院から退院までの費用総額 8〜10万円

投稿者: アプリコット動物病院

2016.04.13更新

結石とは食事や飲み水から摂取されたカルシウムなどのミネラル成分が尿中で集まって石になったものです。腎臓や尿管、膀胱などに石が形成されます。
 原因としては膀胱炎などの感染により尿の状態が変わり結石が形成されやすくなる場合。
水を飲む量が減って尿が濃くなって結石が形成される場合。
食事中に含まれるミネラル量が多すぎて結石が形成される場合、その他ホルモンバランスの乱れや肝障害などでも形成されやすくなることがあります。
 症状は頻尿・血尿・排尿困難・腹痛などです。

症例は2歳と比較的若い女の子のワンちゃんです。頻尿血尿で来院しました。
元気や食欲は良好でした。腹部の触診にて違和感を訴えたため、詳しく調べてみました。

膀胱結石レントゲン
単純レントゲン写真で矢印で示すように膀胱内に結石が二つ確認されました。尿検査で感染を強く疑う所見は認められなかったので、今回は食事によるものが原因かもしれません。
結石の種類によっては食事療法で融ける石もありますが、症状が顕著で、これほど大きい石は手術の対症になります。
麻酔前血液検査も問題なかったので、手術を実施しました。
膀胱結石

全身麻酔でお腹を切開して膀胱を切開して、無事に結石摘出できました。膀胱とお腹の中を洗浄して手術終了です。1cm程の石を2ヶ摘出しました(1ヶは成分分析のために検査センターへ)。
尿道カテーテルを設置して4~5日間入院し、一週間後に抜糸になります。
検査センターからの成分分析の結果、食事療法で再発を防ぐことが可能な石であることがわかりました。
今後このワンちゃんは長期にわたり原因ミネラルを制御した処方食生活です。おやつなどは当面禁止になります。
 
このような結石は膀胱に形成された場合は比較的大掛かりなことにはなりませんが、腎臓や尿管に形成された場合は手術の難易度も上がります。放置すると腎臓病や排尿困難で死に至ることもあります。
血尿・頻尿・排尿困難は普段のトイレの様子を観察することで症状を把握できると思います。
注意して観てみましょう。

小型犬 膀胱結石摘出 入院から退院までの費用総額 10〜12万円前後(結石の数や大きさによる)

投稿者: アプリコット動物病院

前へ
メールでのお問い合わせ