症例集

2017.02.08更新

今回は舌の腫瘍です。

13歳のミニチュアダックスが食欲がない、よだれが多い、緑色のよだれが出る!?とのことで来院しました。

吐き気がする場合にもよだれが多く出ますが、緑色っぽいよだれとのことでしたので口の中に腫瘍でもあるのかなと思い口の中をよく見てみますが何もありませんでした。

でも確かに異常によだれが多いのでガッと口を大きく開けて見ると、舌の奥に巨大な腫瘍がありました。喉全域を占めるほどの巨大な腫瘍でした。こんなものがあったら確かに食べられないよな、、、治療方針は外科手術で摘出するか放射線治療で腫瘍を小さくして再び自力で食べられるようにするか(癌に対抗する治療で手術や放射線による体へのダメージを伴う)、あるいは自力採食を諦めて食道チューブや胃瘻チューブを設置して口を使わずに食べれるようにする(癌と共存していく治療で体へのダメージは非常に少ない)か、、、13歳という年齢を考えると悩ましいです。

口腔内腫瘍で2〜3cmを超えてくると、広範囲に切除手術することが困難なことが多く、手術で痛い思いをしても根治は難しい可能性がある。放射線治療も大学病院に頻繁に通いその都度全身麻酔が必要になり、放射線治療も同様に根治は困難なことが多い。

飼い主様とよく相談させていただいて、今回は外科手術で腫瘍の切除に挑むことにしました。

切除の方法は根治を目指して舌の全切除をするか(舌が無くなるために摂食障害が出るので食事の与へ方を工夫する必要がある)あるいは腫瘍のくっついてる舌の表面を切除するか、、、高齢なのでなるべく体へのダメージを少なくしたいとのことで、舌全切除ではなく、舌部分切除をすることにしました。

舌腫瘍1舌腫瘍2

 

こんな感じで舌の根元に存在していました、口を大きく開けて舌を引っ張り出さないと見れませんでした。写真は麻酔中なのでしっかり見えますが、普段の起きてる時は確認困難です。巨大化して症状が出るまで発見できなくても仕方がないです、、、このくらい巨大化してようやく症状が出るのです。

舌腫瘍手術舌腫瘍手術後

腫瘍だけではなく正常な舌も少し含め腫瘍を完全に摘出して縫い合わせました。抜糸の必要ない吸収糸で縫合します。ついでなので歯石も取りました。

手術後は3日ほど舌を使わせないように鼻カテーテルを設置して流動食を与え、4日目位から自力での採食に切り替えました。手術の影響で舌は少し曲がってしまいましたが、舌の部分切除だったため摂食障害は無く、バクバク食べるので退院としました。

病理検査の結果は悪性黒色腫(メラノーマ)で、癌は完全切除されているが癌細胞が血管の中に浸潤している、とのことでした。口腔内メラノーマは極めて悪性度が高い腫瘍で、血管に浸潤しているとなると今後肺転移が予想されます。今後の治療として抗癌剤をどうするか、、、と悩みましたが、手術後劇的に状態が改善し、よだれも無くなりものすごい元気になってものすごく良く食べるので、肺転移を抑えてさらなる延命を期待して抗癌剤をすることにしました。

抗癌剤は3週間毎に1日だけ日帰り入院して点滴するタイプの抗癌剤を計6回実施しました。抗癌剤中の数ヶ月、大きな副作用で苦しむこともなく経過し、無事抗癌剤も卒業できました!その後は肺転移が起きないか、舌に再発しないか、定期検診することになりました。

その後なんと手術から2年4ヶ月、再発も肺転移もすることなく15歳になり今も元気にしてます。手術をしなければ食べれずに苦しんで数週の命だったかもしれません。

口腔内悪性腫瘍、特に口腔内メラノーマは悪性度が高い癌で、手術や抗癌剤を実施しても比較的早期に再発や転移が起きてしまいます。今回も腫瘍の大きさ、存在位置、病理検査で血管内に癌浸潤が認められたため、正直今回も長期的見通しは長くないかも、、、と思いましたが諦めずに治療して本当に良かったです。

 

小型犬 舌腫瘍 舌部分切除手術 鼻カテーテルor食道チューブ設置 入院から退院まで費用総額 8〜12万円 (舌の切除範囲、腫瘍の大きさによる)

舌の小さなポリープ程度なら日帰りで3〜4万円

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.02.02更新

今回は停留精巣のお話です。停留精巣(呼び方は潜在精巣/陰睾丸など)。停留精巣はワンちゃんにも猫ちゃんにもあります。

精巣は実は生まれる前は腎臓の横に存在し、生まれた後に腹腔外に出て正常な位置に降りてきます。その精巣が生まれてしばらく経っても正常な位置に収まらず、オナカの中に残ってしまったり、内股の皮膚の下に埋もれてしまったりすることを停留精巣/潜在精巣/陰睾丸と呼びます。

原因は遺伝的に性ホルモンの不足や精巣を体外に導く管の未発達などが考えられています。両側が停留精巣である場合は精子形成能力は乏しいようですが、片側が正常位置にあれば精子形成能力はあるので繁殖は可能です。しかしながらこの停留精巣は遺伝するとも言われているため、停留精巣の子は繁殖は控えるべきでしょう。

なぜなら停留精巣の子は精巣癌になる確率が、正常精巣の子に比べて10〜20倍とも言われているからです。精巣癌に関してはこちらをご覧ください。

停留精巣だからと言ってすぐに癌になるわけではありません、一般的には6歳以上で癌になりやすくなります。

精巣癌になってから手術をするより、若いうちに癌になってない状態での精巣摘出手術を積極的に考えましょう。

停留精巣 犬精巣の膨らみが1つしかありません、停留精巣です。

停留精巣 手術 犬腹腔内停留精巣の場合は開腹手術でお腹の中の精巣を摘出します。

基本的に若い子の停留精巣の手術は腹腔内であっても日帰りです。

停留精巣は高確率で癌になります、積極的に精巣摘出手術(去勢手術)を受けるようにしましょう。

 

停留精巣が皮膚の下に埋もれている場合は通常の去勢手術料金もしくは存在位置により通常の去勢手術料金に1500~3000円加算となります(日帰り)。

停留精巣が腹腔内の場合は開腹手術になりますので 避妊手術料金と同じ料金になります(日帰り)。料金はこちらをご覧ください

 

投稿者: アプリコット動物病院

2017.02.01更新

今回はワンちゃんの精巣癌です。片玉(停留精巣、陰睾丸)のワンちゃんはほぼ全ての子が精巣癌になると言っても過言ではありません。また通常の精巣でも精巣癌は発生します。

ワンちゃんの精巣癌は一般的に3種類のタイプがあって、精子を作る細胞の癌(精細胞癌)。精子に栄養を与える細胞の癌(セルトリ細胞腫)。精細胞やセルトリ細胞を支える役割の細胞の腫瘍(間質細胞腫)。となります。

それぞれ特徴があります。

間質細胞腫の半数は両方の精巣に発生します、精巣が大きくなるだけで特に症状は出ません、基本的に良性腫瘍であり外科手術で適切に摘出すれば完治します。

精細胞癌とセルトリ細胞腫はほぼ片側精巣だけに発生しますが稀に両側精巣に発生します。精細胞癌とセルトリ細胞腫は悪性腫瘍であり転移率は5〜10%程なので、大半は手術で完治が狙えます。精細胞癌とセルトリ細胞腫の症状は初期は同じく精巣が腫れるだけで無症状ですが、進行するとなんと精巣が女性ホルモンを作ってしまい、体つきが雌化(左右対称性に被毛が薄くなったり、乳房が大きくなってきたり)する事があります、また女性ホルモンにより貧血になったりもします。かなり巨大化した精細胞癌やセルトリ細胞腫で検査でリンパ節転移や血管の中に癌細胞が入り込んでいる所見が得られたら、手術後に抗癌剤も考えます。腹腔内停留精巣のワンちゃんはほぼ精細胞癌かセルトリ細胞腫の確率が高くなります。

間質細胞腫 間質細胞腫2

手術はこんな感じです。精巣腫瘍は確実に摘出するため精巣を包む袋(陰嚢)ごと摘出します。そんなに大変な手術ではないので大きな問題がなければ基本的に日帰り手術です。この子は間質細胞腫だったのでこれで完治です。

しかし、腹腔内停留精巣癌の場合は開腹手術になり、別次元の手術となります。かなり巨大化して周囲へ癒着/腹膜炎を起こしているような場合は入院が必要になります。

犬 雌性化 精細胞癌 

男の子のワンちゃんなのに乳首と乳房が腫れて雌性化してしまっています。腹腔内ある精巣癌が女性ホルモンを作っているからです。

腹腔内精巣癌 犬下の丸いのは膀胱で、その上が精巣癌です。癒着や腹膜炎はありませんでした。

停留精巣/陰睾丸のワンちゃんは精巣癌になる確率が通常の10〜20倍とも言われています。停留精巣/陰睾丸のワンちゃんは癌になってしまう前に精巣摘出手術を必ず受けるようにしましょう。

精巣癌は転移率が低いため、外科手術単独で完治が狙えます。精巣の大きさの左右不対称に気づいたら積極的に手術するようにしましょう。

お気軽にご相談ください。

 

精巣癌摘出手術 通常位置にある場合 基本的に日帰り手術 費用総額 4〜6万円

精巣癌摘出手術 腹腔内にある場合 状況により1〜3日入院 費用総額 10〜12万円(腫瘍の大きさ、周囲組織への癒着状況による)

投稿者: アプリコット動物病院

2017.02.01更新

今回は15歳の猫ちゃんの腎臓癌です。

症状は最近よく吐く、食欲がイマイチ、という症状でした。若ければ単なる胃炎や食あたりという可能性もありますが、今回は15歳とかなりの高齢なので全身を詳しく調べました。

腎臓癌 レントゲン

血液検査では、高齢ですが特に大きな異常は認めませんでした。しかしレントゲンでは左の腎臓が大きくなっているのがわかりました。

右の腎臓は正常範囲でした。腎臓が大きく見える場合は、代償性肥大(片側の腎臓が機能不全に陥った時に残った方が大きくなる)や水腎症(尿路閉塞により水風船のように

大きくなる)や腎臓の感染/炎症により大きくなる、、などです。超音波検査を実施したところ左の腎臓は腎臓としての原型を留めておらず、充実した細胞塊に置き換わっていましたので、左腎臓は腫瘍化してしまったと考えました。

高齢でもあることから、飼い主様とよく相談して、とにかく吐いて食べれないのが可哀想とのことなので腫瘍化した左腎臓を摘出手術をすることにしました。

腎臓癌 手術

左腎はドス黒く変色していました。気をつけて周囲の血管や臓器との癒着を剥がして、腎臓動脈/腎臓静脈/尿管を処理していきます。

腎臓癌 手術後

 

摘出できました、爪楊枝1本分くらいの大きさでした。

4日間入院して点滴/化膿止めの抗生剤/痛み止めを使用して、食欲が戻ってきて嘔吐も落ち着いたので退院しました。

この腎臓腫瘍を病理検査センターに送ったところ、腎臓の血管の癌である血管肉腫と判明しました。血管肉腫は数ある悪性腫瘍の中でも悪性度が高く、転移性が高いため長期生存率は悪い事が知られています。今後は延命のため抗がん剤の使用を飼い主様と相談しましたが、今現在で食欲あればそれでOK!で、年齢的に抗癌剤はせずに経過観察していくことになりました。

腎臓腫瘍は摘出する前に、体に残されるもう一つの腎臓がちゃんと機能しているか!?をしっかりと尿検査や血液検査や尿路造影などで確認してから手術となります。残される腎臓もすでに機能不全に陥っていたら摘出手術は通常しません。しっかり見極める事が必要です。

また今回は食欲不振と嘔吐が症状でしたが、腎臓癌は血尿が出る事があります。膀胱癌や膀胱炎は頻尿という症状も出ますが、腎臓癌は頻尿を伴わない血尿になります。血尿という症状があれば分かりやすいですが、血尿が無く、片側の腎機能が正常であれば腎臓癌は末期になるまでほぼ無症状です。食欲不振や嘔吐も高齢猫ならばよくある話なので、高齢動物はしっかり検査していかないと重要な病気を見過ごしてしまいますね。

猫 腎臓癌摘出手術 入院〜手術費用総額 12〜15万円 腫瘍の大きさや難易度による

 

投稿者: アプリコット動物病院

2016.09.23更新

今回はワンちゃんの心臓病のお話です。

前回は猫ちゃんの心筋症のお話をしました。心臓の構造はワンちゃんも同じで、心臓の部屋は4つに分かれています。

肺から酸素化された血液を受け取る左心房。

左心房から酸素化された血液を受け取り、それを全身に送る左心室。

全身から二酸化炭素化された血液を受け取る右心房。

右心房から二酸化炭素化された血液を受け取り、それを肺に送る右心室。

また各部屋の間には血液が逆流しないように弁があります。 

犬 正常 心臓

犬 正常 心臓

上の動画は健康なワンちゃんの心臓超音波像です。カラードップラー超音波で血液の流れに色をつけてます。

赤い血液は左心房から左心室へ流入する血流(心臓拡張時)。青い血液は左心室から大動脈へ流れる血流です(心臓収縮時)。心臓が収縮した時に弁がしっかり機能していると血流は左心房側に逆流することなく綺麗に大動脈に流れていきます。

 

 僧帽弁閉鎖不全症とは左心房と左心室の間にある左房室弁(僧帽弁)が機能障害を起こし、弁が完全に閉じなくなってしまい血液の逆流を起こしてしまう病気です。

主に小型犬(チワワ ヨークシャーテリア マルチーズ ポメラニアン トイプードル シーズー キャバリアなど)で非常に多いです(全ての犬種でなります)。

まだ原因はしっかり解明されていませんが、加齢によって発症が増えていきます。

犬 僧帽弁閉鎖不全

こちらが僧帽弁閉鎖不全症のワンちゃんの血流です。左心房から左心室へ流れる赤い血流(心臓拡張時)。左心室から大動脈へ流れる青い血流(心臓収縮時)。それと同時に心臓が収縮した時に左心室から左心房へ噴き出している緑〜黄色のモザイクパターンが確認できます、これが僧帽弁閉鎖不全による血液の逆流です。僧帽弁がしっかり閉まらないため血液の逆流が起きてしまうのです。

僧帽弁閉鎖不全症は初期症状はほとんどありません。聴診器で聴診すると血液の逆流音が心雑音として聴取されるのみです。進行するにつれて咳や散歩時に疲れやすくなったりします(運動不耐性)。

この咳は肺水腫(肺に血液の液体成分が溜まる状態)や大きくなった心臓による気管の圧迫により起こります。血液が左心房に逆流することで左心房に圧がかかって左心房が膨れてきます、これにより気管が圧迫されて咳の原因になります。また逆流により左心房に圧がかかると連結している肺にも圧がかかり血液成分の血漿が血管から肺に漏れ出てしまい肺水腫となって咳や運動不耐性の原因となります。

犬 胸部レントゲン 正常犬 胸部レントゲン 肺水腫

 

健康な子の胸部レントゲンと僧帽弁閉鎖不全症により肺水腫を起こしている子の胸部レントゲンです。本来なら空気で満ちて黒く映る肺が肺水腫によってぼんやり白く映り心臓の輪郭もはっきりしません。また心臓も著しく拡大しています。あまりに肺水腫が重度になると呼吸困難になり酸素不足でチアノーゼ(舌が紫になる)になり卒倒したり死に至るケースもあります。このような状態になると緊急入院で酸素室に入り強心剤や利尿剤の点滴が必要になります。

 この僧帽弁閉鎖不全症は初期症状が無いので発見が遅れがちですが、実は検査及び診断は極めて容易です。単純に聴診器で心音を聴いて心雑音を聴取したら心臓超音波で僧帽弁の逆流を確認するだけです、重症度の評価も含め10分ほどで診断できてしまいます。初期症状が無いので飼い主様は気づいていないだけで、予防注射の時の健康チェックや別の理由で病院にご来院いただいた時に診断されることが殆どです。

 非常に初期の状態の軽い逆流ですと重症化して肺水腫になるまでは数ヶ月以上かけてジワジワとゆっくり進行することが一般的です。しかし急にしょっぱいもの食べて血圧が急上昇したり、激しく興奮して血圧が急上昇したり、弁を支持している糸が切れてしまったり、様々な理由で逆流が急速に悪化し急性肺水腫となることもよくあります。

 治療は一般的に内服治療がメインとなります。血圧を下げて心臓の負担を減らし心筋の変性を防ぎ肺水腫への進行を抑える内服を始めとし、進行に合わせて強心剤の併用、肺水腫傾向になれば利尿剤の併用も必要になります。基本的に内科治療は治すのが目的ではなく、初期は進行し肺水腫になるのを抑え、進行時は肺水腫による咳や運動不耐性を改善し生活の質を上げるのが目的です。内科治療は終生続けるべきです(一部の大学などでは人工心肺装置を使用し心臓にメスを入れ人工弁を設置するなどの根治を目指した外科手術も実施しています)。

 僧帽弁閉鎖不全症は初期の症状がない段階での治療をどうするかが悩みどころです。症例によっては僧帽弁閉鎖不全症であっても無症状期はワンワン吠えて元気いっぱいに走り回っています。咳や肺水腫が発現するまでの無症状期に、いったいどの段階で治療を始めるのか?明確な治療開始時期のガイドラインはまだありません。

 本院の考え方としては、進行してゲホゲホ咳して苦しがってから治療を始めるよりは、せっかく進行を抑える薬が存在するのだから無症状期から進行を抑えるお薬の内服をお勧めしております。

体重5㎏程度の小型犬であれば初期の内服代は1日あたり54円〜108円です。本院では心雑音が聴取され、僧帽弁閉鎖不全症と診断されれば飼い主様とご相談の上、心臓の内服をお勧めします。

また進行を抑える内服をしていても残念ながら最終的には進行して咳や肺水腫が現れる事があります、それを防ぐため定期的に進行度を評価して必要に応じて強心剤や利尿剤の追加を検討します。

 心臓病が心配な方、心臓病でお困りの方、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

2016.09.22更新

今回は猫ちゃんの心臓病のお話です。

心臓は人間と同じように4つの部屋に別れています。

肺から酸素化された血液を受け取る左心房。

左心房から酸素化された血液を受け取り、それを全身に送る左心室。

全身から二酸化炭素化された血液を受け取る右心房。

右心房から二酸化炭素化された血液を受け取り、それを肺に送る右心室。

下の画像は正常な猫ちゃんの心臓の内部構造を示した超音波画像とその動画です。

猫 正常心エコー

 

猫 正常 心臓 

健康な猫ちゃんの心臓はダイナミックに動きます。生命の力強さを感じますすね。

 

心筋症とは、心機能障害を伴う心筋疾患 と定義され、

左心室の壁がぶ厚くなってしまう肥大型心筋症。

左心室の壁が薄くなってしまう拡張型心筋症。

左心室の動きが鈍くなってしまう拘束型心筋症。などなど様々に分類されます。

原因は遺伝、栄養不足、感染症、など様々に言われていますが、詳細なことは分かっていないのが現状です。若い子も高齢の子も同じようになってします可能性があります。

 

症状は非常に悩ましく、ある程度進行するまでは無症状であることが殆どなのです。進行してくると、運動しなくなったり、食欲落ちたりします。さらに進行して末期的になると、ハアハア呼吸が荒くなったり 、失神したり、ぐったりしてきます。

食欲が落ちたり元気が無くなったりしても、歳のせいと思われて発見が遅れることが多くあります。末期になってようやく目に見える症状が現れ、飼い主様が気づくケースが多いです。ここが猫ちゃんの心筋症の怖いところだと思います。中には末期になって呼吸困難になる前日まで食欲が落ちなかった子もいます。

末期になると胸の中に水が溜まったり(胸水)、肺の中に水が溜まったり(肺水腫)、などして急死することもあります。

猫 正常胸部レントゲン猫胸水

健康な子の胸部レントゲンと胸水が溜まった子のレントゲンです。健康な子は肺は黒々として美しく中央の心臓も綺麗に見えますが、胸水が溜まると黒い肺が小さく潰れてしまい心臓も不明瞭になります。この子の胸からは200cc弱の胸水が溜まってました。ここまで胸水が溜まると死ぬほど苦しいでしょう。すぐに酸素吸入して胸に針を刺して胸水を抜いてやらなくてはいけません。

 

猫 拡張型心筋症

こちらは 拡張型心筋症の猫ちゃんの超音波画像です。左心房も右心房も著しく拡張し、全身に酸素化された血液を送る大切な左心室の壁が薄くなってしまい殆ど動いていません。

猫肥大型心筋症

 

こちらは肥大型心筋症の猫ちゃんの超音波画像です。ノイズが多く分かりづらいですが、左心室の壁がぶ厚くなって動きが鈍く、左心室内腔があまり広がりません。

 

このように心筋症と言っても型により病態メカニズムは全く変わってきます。当然治療も異なります。

拡張型心筋症は心筋が動くように強心剤などを使い、逆に肥大型心筋症は筋肉を薄くさせるために心臓の動きを穏やかにさせるようなお薬を使ったりします。

レントゲンや心臓超音波検査でしっかり病態を把握し、それぞれの病態に合わせた治療が必要になります。

 

前述のように猫ちゃんの心筋症は病態が進行しないと症状が現れないので早期発見には定期的な健康診断が必要になります。

なんだか元気がない、寝てばかりいる、などの症状で心臓に問題がある場合があります。心筋症でお困りの方、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

2016.09.15更新

今回はハムスターの腫瘍 麻酔 手術についてです。

前回の症例紹介でウサギの麻酔はデリケートだとお話ししましたが、ウサギさんと同等にハムスターの麻酔も悩ましいです。

とにかく体が小さいため、まず麻酔をかけても大丈夫かどうか調べるための麻酔前検査としての血液検査などが極めて困難で、全身状態の詳細な把握が難しいです。そして麻酔中の血管点滴も不可能です。心電計を装着したり血圧測定したりなどの麻酔モニターも不可能です。注射麻酔で安定して麻酔かけることも困難です。

 ではどうやって麻酔をかけるか? 極めて原始的で単純にガス麻酔を嗅がせて寝ている間に手術してしまうしかないです。とりあえず胸の動きを見て息をしてるかどうかで呼吸数だけモニターするしかないのです。手術場所が体の末端であれば聴診器で心音くらいは聞けますが、手術部位がお腹や胸であれば聴診もできなくなります。もし麻酔中に呼吸が止まってしまっても人工呼吸も困難です。ですのでハムスターの麻酔は言うなれば一か八か的なところがあります。

ですので本院はハムスターに麻酔をかける基準を設けています。

まず年齢はジャンガリアンハムスターなら1歳半まで。ゴールデンハムスターやキンクマ系は2歳まで。元気食欲が安定していること。筋肉に固着していない体表面の腫瘍であること。ちょっと出血しただけでも命にかかわるので、体表面の腫瘍の切除なら自身の頭部の大きさを超えないこと。手術によって根治が期待できる疾患であること(骨が飛び出てしまってる骨折に対する手足の切断手術など)。

それ以上の年齢だったり腫瘍があまりにも大きく根治が困難な場合や腫瘍が体にガッチリ固着してる場合や腫瘍がお腹の中にある場合は手術しない選択肢を提示します。

あとは飼い主様とのご相談になります。よくあるのが体表腫瘍が破裂してジュクジュクしてしまい辛そうで見ていられないからとにかく手術してほしい、といったケースがあります。この場合多くは高齢ハムスターで腫瘍も大きいのです。そして麻酔をかけると手術中に死亡してしまうことが当然あります。しかしながら麻酔中に亡くなってしまうということは、すなわち安楽死ということになります。ですので飼い主様とよくご相談させていただいた上で、このまま腫瘍の破裂によるジュクジュクで苦しむのなら安楽死前提で手術をすることもあります。

ハムスター腫瘍

 

こんな感じでガスを嗅がせて寝かすだけです。この腫瘍は頭部より小さい体表面の腫瘍なので根治が期待できます。手術適応ですね。

ハムスター腫瘍切除

 

なんとか無事終わりました。

ハムスター手術は手術後の傷口縫合は吸収糸と言って溶けて無くなる糸を使って縫いますので抜糸はしません。手術後はハムスターに傷保護のテーピングは不可能です。舐めさせないようエリザベスカラーも結構困難です。

当然傷口を気にして舐めなて糸を齧ってしまうので時折傷口が開いてしまうことがあります。しかしながらハムスターの傷の治りは極めて速いので今まで傷が開いてしまっても再縫合が必要になった症例はいません。

またハムスターは切除した腫瘍を検査センターに送るかどうかを飼い主様に考えてもらってます。人間やワンちゃんネコちゃんであれば手術後に癌の種類に応じて抗癌剤や放射線治療といった追加治療の選択肢があります。しかしハムスターの場合は検査に出せば腫瘍の種類は確定できますが、その後の抗癌剤や放射線治療が無いのでの延命治療ができないので検査に出さないこともあります。

 

ハムスターは腫瘍が非常に多い動物種です。ハムスター腫瘍でお困りの方、お気軽にご相談ください。

 

ハムスター 麻酔 腫瘍切除 1万5千円〜2万5千円前後(腫瘍の大きさや難易度による)、腫瘍を検査センターに送る場合プラス1万2千円。

 

投稿者: アプリコット動物病院

2016.09.15更新

今回はウサギさんの去勢手術と避妊手術についてです。

ワンちゃんネコちゃん同様に、去勢手術は精巣摘出手術で避妊手術は卵巣子宮全摘出手術となります。

男の子の去勢手術の目的は繁殖を防ぐことですが、主たる目的は精巣を摘出することで男性ホルモンを減らし縄張り意識を抑えることにより、尿マーキング行動や攻撃行動を制限することになります。また発生は稀ですがウサギさんの精巣癌を防ぐことにもなります。

女の子の避妊手術の目的は繁殖を防ぐことですが、主たる目的は子宮関連疾患の予防です。以前の症例紹介http://www.apricot-ah.jp/blog/2016/04/post-5-211048.htmlでも紹介させていただいたように、女の子ウサギは高齢になってくると非常に高確率で子宮癌になります。その確率は高齢女の子ウサギの4頭に1頭とも言われています。さらに子宮癌以外にも子宮内膜炎・子宮水腫といった子宮疾患もあり、こう言った病気も含めると子宮関連疾患には本当に高確率でなるのです。卵巣子宮を摘出することでこういった子宮関連疾患を確実に防げます。また女の子ウサギでもホルモンの影響で攻撃行動が出ることがありますが、それも制限できます。

デメリットは何と言っても麻酔です。草食動物であるウサギさんの麻酔はワンちゃんネコちゃんに比べとってもデリケートです。麻酔の入りかけ(麻酔導入)に呼吸が停止したり、麻酔の覚めかけに意識障害からパニックを起こし突然心肺停止をしたり、ということが実際起こります。しかし近年様々な麻酔注射が開発され、それらを複合して使用することで安定した麻酔導入が得られるようになり、麻酔の覚めも穏やかに覚醒するようになりました。またウサギさんは喉が狭いため昔は困難だった気道確保を容易に行える気道チューブも発売され、人工呼吸も容易に行えるようになり麻酔中の呼吸管理が極めて安定するようになりました。麻酔モニター機械の精度も向上し、体の小さいウサギさんでも麻酔中の体の状態を詳細にモニタリングできるようになりました。

こうして昔に比べるとウサギさんの麻酔管理技術はかなり向上したと言えますが、それでもやはり草食動物であるウサギさんはイレギュラーな麻酔関連アクシデントがあり、手術後に急変してしまう例はあります。あるウサギ専門病院の先生によると草食動物であるが故の痛みや恐怖による交換神経性心停止(アドレナリンショック)、麻酔前検査では検出しきれない心筋症や胃潰瘍などによって術後に急変してしまうケースがあるのです。

こういった麻酔関連の問題を考えると手術を実施すべき年齢は当然若いうちが良いでしょう。一般的にウサギさんの平均寿命は7歳程度であり少なくとも4歳半までには済ませたいものです。生後6ヶ月齢から4歳半までに実施することをお勧めいたします。

ウサギ気管ウサギの気道チューブによる気道確保です。

このチューブのおかげで呼吸管理が極めて安定するようになりました。

ウサギ去勢手術ウサギ去勢後

男の子ウサギの去勢手術の手術前と手術後です。去勢手術は極めて簡単で手術時間は左右精巣合わせて15分程度です。傷口が小さいので去勢手術は傷の縫合はしません。手術後のエリザベスカラーやテーピングも必要ありません。

ウサギ避妊手術後こちらは女の子の避妊手術後です。(この写真は同時に乳癌切除もしたので傷が2箇所あります)

避妊手術の所要時間は30〜45分位です。避妊手術はお腹を切り開くため手術後には傷口を縫合します。縫合部はテーピングをしたり洋服を着せたりして傷を舐めさせないように保護します。10日前後で抜糸(抜糸に麻酔は必要ありません)が必要になります。

去勢手術は基本的に日帰り手術。避妊手術は日帰り〜1泊入院になります。

ウサギさんの去勢手術・避妊手術でお困りの方、お気軽にご相談ください。

 

 

 

投稿者: アプリコット動物病院

2016.09.13更新

今回は消化管の病気です。

下痢や吐き気は実に様々な理由で生じます、単なる拾い食いや急な食事変更による食あたりからストレス性胃腸炎、寄生虫感染、膵臓や肝臓・腎臓といった内臓疾患、胃腸の腫瘍などなど原因は山ほど考えられます。

今回のリンパ管拡張症・リンパ球ー形質細胞性腸炎とは胃腸そのものの病気です。この2つの病気は蛋白漏出性腸疾患とも言われ、あまりにも症状がひどく長期化すると食べたフードのタンパク質が吸収できずに下痢とともに体外に排泄されてしまいます。そうするとしっかり食べているにもかかわらず、栄養失調状態(タンパク質欠乏)になり、お腹に水が貯まってきます(腹水貯留)。

まずリンパ球ー形質細胞性腸炎はリンパ球・マクロファージ・形質細胞などの様々な炎症細胞が胃腸の粘膜に浸潤して嘔吐や下痢などの機能障害を起こす病気です。原因は胃腸粘膜の免疫機構の欠陥と言われていますが、なぜ免疫機構に欠陥が生じるのか?など正確な原因メカニズムは明確にされていません。

リンパ管拡張症は腸内のリンパ管の流れが悪くなってしまい、腸の機能不全を起こす病気です。リンパ液の流れが悪くなる原因は心臓病など胸の中の問題で全身のリンパ液の流れが悪くなる場合もまれにあるようですが、一般的にリンパ管拡張症の大多数が前述のリンパ球ー形質細胞性腸炎による腸の炎症の結果起こるとも言われています。

診断方法は一般的な下痢止めや吐きどめに反応がなく、血液検査で典型的な低タンパクなどの所見が得られ、その他の内臓疾患や腫瘍性疾患が否定されれば、リンパ管拡張症・リンパ球ー形質細胞性腸炎の疑いが強くなります。しかし確定的に診断を下すのであれば全身麻酔下での胃カメラ(内視鏡)検査が必要になります。胃カメラで胃や小腸から腸粘膜の一部を採取して検査センターに送ります。細胞レベルで調べてもらい腸粘膜内に炎症細胞の浸潤やリンパ管の拡張が認められれば確定診断となります。胃カメラはお腹を切り開くことなく検査できるので日帰りもしくは1泊程度の入院で済みます。

 

IBD

胃カメラでリンパ球ー形質細胞性腸炎及びリンパ管拡張症と診断された写真。

治療はまずは負担のない治療法として食事療法です、なるべく低脂肪の食事を与えます。食事療法で不十分な場合は、腸内細菌を整える抗生物質や炎症を抑えるステロイドを主体とした内服治療になります。一般的な食事療法や内服治療に反応がない重症例は強力な免疫抑制剤や完全脂肪除去食を飼い主様の手作りで与えてもらう必要もあります。治療に反応して症状が治まってくれば内服薬は必要最低限まで少しずつ減量していきますが、基本的には完全に治療をやめると再発します。終生にわたる治療が必要になります。

一般的な治療に反応しない嘔吐や下痢は単純な食あたりや寄生虫などではなく腸そのものが原因である可能性があります。お気軽にご相談ください。

小型犬 胃カメラによる胃腸粘膜採取 細胞病理検査 日帰り〜一泊 費用総額 5〜6万円

投稿者: アプリコット動物病院

2016.09.11更新

今回は 小型犬(トイプードル、チワワ、ヨークシャーテリア、マルチーズ、ポメラニアンなど)で非常に多い膝蓋骨内方脱臼という整形外科の病気です。

正常では膝のお皿(膝蓋骨)は太ももの骨(大腿骨)にあるレールの上にあります。そこをスライドすることで膝関節の曲げ伸ばしをスムーズにするという役割があります。膝蓋骨内方脱臼はこの膝蓋骨が大腿骨上のレールから脱線し内側に脱臼して、痛みや跛行(ビッコ)を起こす疾患です。

原因は生まれつき膝関節周囲の筋肉や骨や靭帯付着部などの形成異常が存在し、加齢とともに進行して脱臼に至る場合。この場合は早ければ生後2〜3ケ月程度でもう脱臼傾向になっています。一方 成犬になってから転んだり、落っこちたりして膝周囲に損傷が加わって膝蓋骨が脱臼するケースもあります。

一般的に脱臼の具合から重症度が4段階に分類されます。

グレード1 膝蓋骨は常に正常位置にあるが、指で押すと脱臼し指を外すと膝蓋骨は元の位置に自然と戻る。

グレード2 膝蓋骨は常に正常位置にあるが、膝関節の曲げ伸ばし時にしばしば脱臼する。再び膝の曲げ伸ばしで元の位置に自然と戻る。

グレード3 膝蓋骨は常に脱臼状態で、指で押すと元の位置に戻すことができるが指を外すとすぐに脱臼する。膝の曲げ伸ばしでは元の位置には戻らない。

グレード4 膝蓋骨は常に脱臼状態であり、そこで固定されており指で押しても元に戻すことはできない。

症状はグレード1〜2は無症状〜時々跛行(ビッコ)する程度です。脱臼が始まった頃に痛みや跛行が目立つこともありますが、脱臼状態に本人が慣れてくると跛行や痛みは無くなっていきます。

グレード3〜4は常に脱臼状態であり、本人が脱臼状態に慣れていて痛みや跛行が目立たなくても、筋肉の衰えや骨の変形までもが現れてきてやがて歩行異常が永久に続くことになります。

パテラ健康健康な子のレントゲンです。

グレード4グレード4の子のレントゲンです、膝蓋骨の脱臼とともに靭帯が引っ張られるのでスネの骨が内側を向いてしまっており、痛みによる跛行で筋肉の衰えもあります。

治療方針はグレード1〜軽いグレード2は経過観察です。グレード2の症状がひどい場合〜グレード3〜4は治療が必要で外科手術になります。

手術は膝蓋骨が収まっている大腿骨の溝を深く削って、膝蓋骨を安定化させます。

パテラオペ関節を開けて大腿骨のレールを確認してます、凹凸が乏しく膝蓋骨はツルリと脱線してしまいます。

パテラオペ後大腿骨のレールの溝をドリルで掘り下げて、しっかりとした凹凸を形成します。

次に関節を包む関節包の内側を切開して開放したり、外側を縫い縮めたりして調整し膝蓋骨を安定化させます。脱臼が重度の子はスネの骨の靭帯付着部を剥がして外側に移植するなど術式を追加したりします。

パテラオペ後レントゲン手術後レントゲンです。膝蓋骨が大腿骨の真ん中に戻ると、内側を向いていたスネの骨も自然と正面を向きます。

手術後は感染防止のための抗生剤、痛み止めなどが必要なので5〜7日入院が必要になります。痛みや腫れを抑え関節の動きを制限するテーピングは手術から一ヶ月弱してもらいます。

この膝蓋骨内方脱臼という疾患は基本的には足だけの問題であり命に関わらない疾患である。そして脱臼状態に慣れてくると跛行や痛みが消失して見た目は治ったように見えてしまう事もあります。気が付いたらグレード4になっていて骨の変形や筋肉の衰えが起きていることもあります。若い子でグレード3以上の子は症状がなくても将来のために積極的に手術を考えた方が良いでしょう。お気軽にご相談ください。

小型犬 膝蓋骨内方脱臼 入院から退院まで費用総額はグレード2〜3の場合で片足10万円前後、両足同時手術の場合は17万前後。グレード4の場合は片足12万円前後。

 

投稿者: アプリコット動物病院

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